キプロス考古学博物館

展示品は時代順の配列になっています。古い時代から見学していきましょう。

まず最初に目についたのがこれ。

「ポモスの偶像」と呼ばれるものです。十字架のように見えますが、キリスト教の十字架とは全く関係ありません。腕を広げた女性像で、豊饒や多産を表しています。紀元前３０００年頃のものでした。
（参照ＵＲＬ）Idol of Pomos　Wikipedia

キプロスの通貨はユーロですが、１ユーロと２ユーロのコインには「ポモスの偶像」の絵柄が採用されています。　　　　　　

ミケーネ時代の陶器（紀元前１３世紀～紀元前１１世紀頃）

まるで中国西安で見た兵馬俑のようにも見えます。
紀元前１３世紀頃にはトロイア戦争が起こっています。その当時の人々もこんな格好で戦っていたのでしょうかね。
トロイア戦争はミケーネを中心とするアカイア人（ギリシア人の一派）が小アジアのトロイアと戦った戦争です。アカイア人はこの時期からキプロス島にも渡って来ています。彼らがトロイア戦争を想起しながらこんな像を作ったと思うのは、私だけの妄想でしょうかね？

アフロディテ像　　　　　　　　　　　　　　ローマ皇帝像

【左】紀元前１世紀頃のアフロディテ（ヴィーナス）像

ギリシア神話は残酷ですね。アフロディテ出生の秘密を暴露しましょう。

天地創造のカオスのなかから生まれた大地の女神ガイアが、天空の神ウラノスを生みます。ガイアはウラノスと結婚します。息子と結婚したのです。仕方ありません。このとき地上にはガイアとウラノスしか存在しなかったのですから。二人の間に「ティタン族」が生まれました。ウラノスは我が子ティタンたちが自分を脅かすことを恐れて、彼らを大地の底に閉じ込めてしまいました。ウラノスの妻であり、ティタンの母でもあるガイアはこれを怒り、末子クロノスにウラノス殺害を命じます。クロノスは就寝中の父親ウラノスに忍び寄り、まず手足を切断、次に生殖器を切断して、これを海の中に投げ入れました。ウラノスの生殖器は白い泡となり、その中から生まれたのが愛と美の女神アフロディテでした。アフロディテは最初ギリシア本土のペロポネソス半島南東の小島キテーラ島に上陸しますが、西風に送られてキプロスのパフォスに漂着しました。
（パフォスには明後日訪れます。）

パフォスの浜に流れ着いたアフロディテはオリンポス一の醜男である鍛冶の神ヘーパイストスと結婚。しかし、愛と美と官能の女神であるアフロディテは自由奔放に男たちを愛し、夫の嫉妬を買います。
　（参考文献）キプロス島歴史散歩 (新潮選書)p.32～33

【右】ローマ帝国皇帝、セプティミウス・セウェルス帝（在位：193～211）像

セプティミウス・セウェルス帝で忘れることができないのは、パルミラ神殿の記念門をつくった人物であるということです。彼はシリアに関係の深い人物でした。
（シリアのパルミラ神殿、シリア内戦のためにもはや行けなくなりましたね。残念きわまりないです。）

　（当サイト内参照URL）　パルミラの地理・歴史　　パルミラ（４）記念門など

上の二つの像を見ると、キプロスはギリシア神話のふるさとでもあり、ローマ帝国の領土でもあったことに改めて気づかされます。

これらは女性、男性の理想像を描いたものなのでしょうか？
だとすれば、
二千年近くも前の作品ですが、この感覚、現代人とそれほど違いはなさそうですね。

眠るエロス像（紀元後３世紀、パフォス出土の大理石像）

エロス（キューピッド）はアフロディテの息子であるとも、そうでないとも言われますが、いつもアフロディテのそばに仕え、アフロディテの腰巾着でした。アフロディテはエロスに「おまえの愛の矢であの男の心臓を射ておやり」と命じます。エロスが標的の男の心臓を矢で射抜くと、たちまち男は恋に落ちてしまいます。
　（参考文献）キプロス島歴史散歩 (新潮選書)p.33

エロスは仕事のしすぎでしょうか？少々お疲れで、お休み中のようです。