聖キリルとメトディウス教会

現在のロシア語などを表記する文字であるキリル文字の元をつくったのが、キリルとメトディウス兄弟です。彼らの名前を冠する教会はスラブ語圏ではいくつかあります。私はこれまでにブルガリアで見たことがあります。
（参考ＵＲＬ）　ブルガリア：ヴェリコ・タルノヴォ　聖キリルとメトディウス教会

キリルとメトディウスはチェコでも有名で、７月５日は、「キユリロスとメトディウスのスラブ語布教の記念日」としてチェコ共和国の祝日に指定されているほどです。

メトディウス（兄）とキュリロス（弟）はビザンティン帝国のテッサロニキで生まれの聖職者です。ある日、モラヴィア王国（現在のチェコ）の王はビザンツ帝国にキリスト教の布教を願い出ました。白羽の矢が当たったのがメトディウスとキュリロスです。モラヴィア国王はキリスト教布教にあたり、不便を感じていました。当時、チェコをはじめスラブ語には話し言葉はありましたが、文字がなかったのです。
メトディウスとキュリロスは現在のロシア語などの元になる文字（グラゴール文字）を作りました。後に改良され、キリル文字となって、現在ロシアやウクライナ、ブルガリア、マケドニア、セルビアなどのスラブ語で使用されています。ただ、スラブ語でもチェコ語は現在ではラテン文字を使用しています。

【左】地下室入り口が見えています。

【右】入り口が閉まっていたガラス越しに撮った写真です。

カレル広場の西に立っている１８世紀に造られたバロック様式の教会です。しかし、この教会はキリスト教史においてよりも、ナチスに対する抵抗運動の歴史のなかで有名です。

ハイドリヒ暗殺事件とその報復　　～　教会の地下礼拝堂

1939年以来、チェコはナチス・ドイツの保護領とされていました。当時、チェコはルール地方と並ぶドイツ最大の工業地帯で、ドイツの戦車の30％がチェコで生産されていました。しかし、次第にナチスに対する抵抗運動が広まり、兵器生産が落ち込んでいきます。
1942年5月27日朝、ナチス・ドイツのチェコ保護領の最高責任者ハイドリヒはメルセデス・ベンツのオープンカーでプラハ城に出勤途中、手榴弾が投げつけられます。その傷が元で一週間後に死亡しました。
ナチスは密告と拷問により暗殺実行者がこの教会にかくまわれていることを突き止めました。6月18日、教会を取り囲み、小銃と手榴弾による攻撃が行われ、地下の礼拝堂で隠れていた首謀者らは殺されました。
それだけでナチスの怒りは収まりません。報復が続きました。彼らをかくまった修道士ほか百人あまりの人が見せしめに次々と殺されました。さらに暗殺実行者の出身地の村では成年男子全員が殺害され、女性と子どもは全員収容所に送られました。ハイドリヒ暗殺事件の報復であわせて一万三千人以上の人々が犠牲になりました。
（参考文献）『図説プラハ』p.54～57

カレル橋から２本南のイラーセク橋のたもとの交差点に立っている面白い形のビルです。聖キリルとメトディウス教会から西に１００メートルほどのところにあります。1990年代に保険会社のオフィスとして建てられ､現在も使用されています。