西大門独立公園 と 西大門刑務所歴史館
三・一独立宣言記念塔
| 西大門独立公園にやってきました。まず見つけたのが、三・一独立宣言記念塔。塔の後ろの壁面には、１９１９年の三・一独立運動の際に読まれた独立宣言文、公約３章、そして、独立宣言に署名している３３人の名前が書かれています。（その内訳は天道教徒１５人、キリスト教徒１６人、仏教徒２人と言われています。） そうはいっても、内容がわからないのは何とももどかしい。そこで、その内容の一部を紹介しておきたいと思います。 独立宣言文と公約三章には様々な訳があります。ここでは、『韓国修学旅行ハンドブック』（平和・国際教育研究会）所収の山辺健太郎『日本統治下の朝鮮』（岩波書店）からその一部を掲載しましょう。 独立宣言文 「われわれは、ここに朝鮮の独立と朝鮮人民の自由民たるを宣言する。これをもって世界万邦に告げ、人類平等の大義を明らかにし、かつ、これを子孫に教え、民族独立を天賦の権利として永遠に保持せさるのである。・・・ 日本の学者は講壇において、日本の政治家は実際において、わが祖宗の世業を植民地化視し、わが民族文化を賤民視し、もっぱら征服者の快をむさぼるのみであった。しかし、日本の不義を責め、・・・他をうらむいとまはない。現在多忙なる吾人（われわれ）は、過去をとがめる暇がない。今日われわれの専念するところは、ただ自己の建設のみである。決して他を破壊することではない。 日本政府は勇気、明断、果敢、もって旧来のあやまりを正し、真正なる理解と同情とにもとずく、友好の新局面を打開することが、彼我のあいだに禍を遠ざけ、祝福をもたらす捷径であることを明白にすべきである。また、含憤蓄怨の二千万人民を、威力をもって拘束することは、東洋永遠の平和を保証する所以ではない。・・・」 公約三章 一、われわれの事業は、正義、人道、生命尊重のための民族的要求、すなわち自由の権利を発揮するものであって、けっして排他的感情に逸脱してはならない。 一、最後の一人まで、最後の一刻まで、民族の正当なる意志を悠然として発表せよ。 一、いっさいの行動は、もっとも秩序を尊重し、吾人の主張と態度とを、あくまで公明正大にせよ。 （独立宣言文は公約３章ともに、格調高いですね。まるで、ガンジーの非暴力不服従運動を想起させますね。） |
殉国先烈追悼の塔
| 西独立公園で次に見つけたのがこれ。背後の壁面にはレリーフが施されています。何が画かれているのでしょう。下で詳しく見てみましょう。 |
| 【左】反日義兵に立ち上がった韓国の人々が、日本によって処刑されている 【右】あの 柳寛順 が独立万歳を叫んでいる |
| 【左】独立万歳を叫ぶ人々 【右】安重根（アン・ジュングン）が伊藤博文を狙撃する瞬間 （1909年10月26日：旧満州ハルピン駅） （安重根は、韓国では、伊藤博文を暗殺した英雄です。独立宣言文では非暴力を唱えていますが、実際には暴力も使われました。もちろん、日本側からの暴力もあったのは当然ですが。 抵抗する側の暴力は往々にしてテロリズムとして非難されます。しかし、テロリズムとしてとらえるのか、レジスタンス（抵抗運動）としてとらえるのか、なかなか難しい問題ですね。 実際、今日までの多くの社会運動においても、それが最も高揚する場面においては、理性でつくった枠組など暴力によって簡単に乗り超えられてしまいます。 フランス革命は、封建制度を打ち破り、自由と平等の近代史を切り開く素晴らしい出来事とされます。しかし、その高揚場面においてはギロチンで多数の死者が出ました。そんな、いわば成功した歴史においてさえ、暴力は使用されます。 ところで、司馬遼太郎さんによれば、日本の朝鮮支配は日本近代史における最大の失敗だとされます。そんな失敗の歴史においては、双方からの暴力もより強力であり、残念ながら、陰惨な場面もでてくることでしょう。） |
西大門刑務所歴史館
| 西大門独立公園の一角に西大門刑務所歴史館があります。画面中央に見える獄舎の見張り台のところが入り口になっています。 １９０７年の第３次日韓協約で日本は韓国の内政権を奪います。この時以来韓国の監獄は韓国統監府（日本の韓国統治機関、後の朝鮮総督府）の監督下に入ります。 以下、チケット売り場でもらった案内リーフレットから紹介しましょう。 1908年10月21日 京城監獄として新築 （ソウルは日本によって京城と呼ばれるようになっていました。） 1912年 9月 3日 西大門監獄と名称変更 1923年 5月 5日 西大門刑務所と名称変更 1945年11月21日 ソウル刑務所と名称変更 （日本がつくったものを韓国が継承して使用したのですね。） 1987年11月15日 ソウル刑務所が京畿道義旺に移転 1998年11月 5日 西大門刑務所歴史館、開館 西大門刑務所跡とその周囲は、１９９２年に公園になって公開され、１９９８年に刑務所歴史館が開館しました。 |
| 【左】旧獄舎の壁沿いにブックフェスティバルの本が売り出されています。今日は韓国の「こどもの日」ということで、子ども向けの本がいっぱい並べれられています。 【右】追悼碑 西大門刑務所に投獄され、亡くなった人の追悼碑 獄舎の中では、狭い独房に閉じこめられる体験ができます。また、拷問器具などが所狭しと陳列されています。さらに、等身大の人形を使った死刑や拷問の疑似体験もできます。あちこちから女性のうめき声までがテープで流されています。繊細な感覚の持ち主なら、気分が悪くなる場合もあるのではないかと、私は恐れます。そんな館内の写真はありません。館内は写真撮影禁止と書いてありましたし、またそうでなくても、喜んで写真を撮る気分にはなれません。 韓国の人々がこんなのをずっと見ていると、反日感情が生まれるのも当然とも思えてきます。 しかし、そんなプロパガンダ効果も時とともに次第に薄れてきているのかな、そんなことを少し感じることのできる出会いがあったのは幸運でした。広い刑務所歴史館の見学を終えて外へ出ようとしたとき、出口付近で思わぬ笑顔に出会えたのでした。これは、私にとって大きな救いでしたね。 （参照） 「世界の笑顔」シリーズ ： 西大門刑務所歴史館で出会った女子大生の笑顔 |